吸音・吸音材はどういうモノ?

吸音・吸音材はどういうモノ?

音が多孔質の材料に吸い込まれ、内部で迷子になるように広がりながら、エネルギーをゆっくりと振動に変え、ついには熱へと変換される――これを「吸音」と言います。このような働きを持つ材料は「吸音材」と呼ばれます。例えば、グラスウールやロックウール、ウレタン、パンチングメタルなどが代表的です。さらに、材料の裏側に空気の層を作ると、吸音効果がより高まることがあります。
グラスウールは、非常に細かいガラス繊維から作られていて、安定した吸音効果があります。ロックウールは、岩石やスラグを溶かして作った繊維を使用していますが、繊維の太さや長さが均一でないことがあり、少し粗さを感じることがあります。

一方、発泡スチロールは断熱材であり、吸音材とは異なります。また、表面に塗装やコーティングがされている製品や、板状のものが吸音材として販売されていることもありますが、これらは多孔質ではないため、本来の意味での吸音材とは言えません。(厳密に言えば、発泡スチロールや鉄板、コンクリートもほんの少し音を吸収しますが、実質的には考えなくて良いでしょう。)

吸音材の性能は、「吸音率」と呼ばれる数値で表されることがありますが、これは同じ条件で測定された結果を比較するためのものであり、材料そのものの性能を直接示すものではありません。

みんながしやすい勘違い1

吸音材の測定に「正しい方法」というものは存在しません。いくつかの測定方法があり、材料によって適した方法が異なるからです。例えば、無響室に使われる厚い吸音材(吸音クサビ)を残響室法で測定すると、誤差が出やすくなります。厚みのある材料は「面積効果」という現象があり、実際よりも高い吸音率が出てしまうことがあるのです。
残念ながら、この誤差を利用して、自社の吸音材が優れているように見せかける企業もあります。測定方法を公開しない場合、ユーザーが正確な情報を得られないこともあります。

みんながしやすい勘違い2

吸音材を製造している会社でも、誤解をしている場合があります。例えば、自社の吸音材の吸音率を「残響室法」という方法で測定し、他社の製品を「垂直入射法」で測定した結果と比較して、自社の製品が優れているとするのは誤りです。吸音率は、同じ条件で測定しなければ正確に比較できません。また、同じ測定機関と測定方法を使わなければ、設備の違いによって数値が変わってしまうことがあります。

グラスウール vs. ロックウール: 比較

参考:旭ファイバーグラス株式会社のカタログ
グラスウールは、長くて均一な繊維がしっかりと絡み合っており、性能が安定しているのが特徴です。また、曲げたり引っ張ったりしても劣化しにくい強さがあります。一方、ロックウールは繊維の太さや長さが均一ではないため、触ったときに少しザラザラした感触があることがあります。

内容 グラスウール ロックウール 連続発泡ウレタン
吸音性能
価格
耐火
繊維精度
復元力・強度 × ×
粉塵発生 × ×

大切なポイント

・吸音材は、多孔質であることが必要です。つまり、音が材料の中に入り込んで拡散できる構造が必要なのです。
・吸音材は、厚みがあるほど吸音効果が高まります。
・断熱材と吸音材は、異なるものです。
・高い周波数の音は吸音しやすいですが、低い周波数の音は吸音しにくいです。
・金属製の吸音材もありますが、金属は音を反射するため、無響室などでは使用できません。
・通常、吸音率が0.99を超える数値を表示する必要はありません。
・音が3dB(A)減少すると、音のエネルギーが半分になる計算です。
・スポンジやカーテンなども多少は音を吸収しますが、それを吸音材とするかどうかはメーカーの判断次第です。